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18 オオミズナギドリはなぜ山で保護されるのか
新潟県では秋になると、各地でオオミズナギドリが保護される。それは粟島で繁殖しているオオミズナギドリが渡りの途中で、海上で強風にあおられて落下するためと思われていた。だが、海岸から近い場所だけではなく、奥胎内や魚沼地域でもオオミズナギドリは保護されている。なぜオオミズナギドリは海から離れた場所でも保護されるのだろうか。
繁殖している粟島では、急斜面に巣穴が作られている。その斜面から滑空するように、オオミズナギドリは海に向かって飛ぶ。京都府の冠島では、飛び立つ目的で高い場所に上がるために、木に登ることもあるようだ。
しかし、平らな陸上に落ちたオオミズナギドリは、そこから飛び立つことができない。海上ならば、波に乗って飛び上がることができるが、地上に落ちたら歩くことしかできず、死ぬしかないのだ。そのため、オオミズナギドリは斜面に巣を作り、繁殖以外ではほとんど海上で暮らしている。
実際にGPSを使った最新の研究では、オオミズナギドリの成鳥は繁殖期に巣に近づく以外に陸上を飛ぶことはない。粟島からの渡りでは、北上して津軽海峡を抜けて太平洋に至るか、西に進んで太平洋に向かう。
しかし、親から少し遅れて渡りを始める幼鳥は、本能のまま南へ向かうのだろうか、本州の東北地方から中部地方を山越えして太平洋に至ることが最近明らかになった。つまり、これまで保護されていたオオミズナギドリは、飛翔の未熟な幼鳥が太平洋に向かって本州を山越えする途中で体力の消耗や強風等により落下していたのである。
*写真は串田孫一さんが「21世紀に残したい自然」に推薦した粟島の西海岸