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12 越後の山はブナ二次林ばかり

 先日、「山とブナ林」に関する講演をした。数年前にある雑誌に連載したコラムをベースにしたもので、同じ内容を話すのは2回目だった。

 新潟県で最も低い場所に生えているブナは標高10mだが、その場所には1本しかブナが生えていない。新潟県内でブナが現れるのはだいたい標高200mくらいからで、標高500m付近からブナが優占する森林になる。そのほとんどがブナ二次林で、伐採された後に再生した森林だ。しかし、そのことを意識しながら山を歩いている登山者はどれくらいいるだろうか。

 講演では、伐採後のブナ林の再生方法として実生と萌芽の説明をし、それぞれ典型的なブナ二次林を示した。実生で再生したブナ二次林は十日町市の美人林、萌芽で再生したブナ二次林は馬ノ髪山から俎倉山を歩いた時に撮影したものである。実際のブナ二次林は、実生と萌芽が混在した森林が多いだろう。写真で、日本国、光兎山、櫛形山、二王子岳のブナ二次林を紹介した。

 共通するのは、ブナの太さが直径20p前後ということである。林齢にすると100年弱であり、大正から昭和の前半にかけて伐採されたと思われる。つまり、その頃の越後の山は、どこも伐採されて丸裸だったのではないだろうか。

 伐採の目的は炭焼きである。伐採したブナを軽くして、山から運び下したのだ。ブナ二次林を歩いていると、必ず炭窯跡と思われる窪みを登山道脇で見つけることができる。二王子岳では油こぼしの上まで、炭焼きがされていたと聞いた。最近、ブナ二次林を歩いているとどうしても炭窯跡を探してしまう。