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17 広いウダイカンバ林

 関川村の葡萄鼻山(798.3m)に登ろうと思ったのは、「越後百山」に選ばれていたからだった。1995年3月、テレマークスキーを担いで、大石ダムから除雪された道路を歩いた。除雪終点には車が1台あり、スキーの跡があった。

 スキーにシールを貼ってスキーの跡を辿ると、1時間ほどで「梁山泊」と呼ばれる山小屋が見えてきた。小屋にいた男性は、「2週間後にこの山小屋に泊まるので、雪の様子を見に来た」と言った。

 男性と別れ、梁山泊からスギ林を抜けると、ウダイカンバの林になった。これまで新潟県内でウダイカンバを見たことは何回かあった。しかし、せいぜい他の広葉樹に混ざって数本程度であり、このように1ヘクタール以上もあるウダイカンバ林を見たことはなかった。なぜ、こんなに広いウダイカンバ林があるのだろうか?

 その答えがわかったのは、四半世紀も過ぎた2021年10月のことだった。毎年秋に焚き火を囲みながら酒を飲む会を行っていて、その年の会場を梁山泊にするために下見をした。

 霧雨が降り始めた梁山泊の外で昼食をすませ、ウダイカンバ林を目指した。これまで葡萄鼻山には3回登っていたが、いずれも残雪期であり、ウダイカンバ林に続く歩道を歩くのは初めてだった。すると、ウダイカンバ林でこれまでに見たこともない大きな炭窯跡を発見したのである。

 大きな炭窯跡は、大規模なブナ林の伐採を予想させた。その広い伐採跡地に軽い種子のウダイカンバが一斉に更新したのだ。その時はカメラを忘れてしまったのだが、2週間後の焚き火飲み会の翌日、立烏帽子から葡萄鼻山を一周し、同行者をモデルに炭窯跡の写真を撮ることができた。