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10 珍しい魚つき保安林

 新潟県の海岸線は暖温帯なので、常緑広葉樹林帯になる。新潟県内には、高木性の常緑広葉樹は数種類しか分布していないが、そのなかでも海岸線に多いのがタブノキである。タブノキの北限は青森県であり、佐渡島と粟島はもちろん、本州でも南の糸魚川市から北の村上市まで、海岸線に分布する。

 村上・岩船地域の代表的なタブノキ林は、三面川河口右岸の多岐神社周辺にあり、魚つき保安林に指定されている。森林は木材生産の他に、様々な公益的機能がある。この公益的機能を高度に発揮させるために、保安林では伐採などの施業が制限されている。保安林は17種類あるが、魚つき保安林は比較的珍しく、新潟県内には2箇所しかない。

 魚つき保安林は、河川や湖沼の魚の繁殖や生息を助けることを目的としている。三面川は世界で初めて鮭の回帰性が発見された川である。この魚つき保安林は、鮭が大海に向かう時、海水になじむ場所であり、秋に還ってきた鮭が三面川を遡る前に木陰で体を休める場所でもある。保安林に指定されたのは明治44年だが、このタブノキ林は江戸時代から「お留山」として禁伐にされ守られてきた。

 源義経が奥州に向かう途中で立ち寄った伝説がある多岐神社の手前に、約3メートルの高さの橋がある。タブノキは日本海にかぶさるように樹冠を広げているので、その橋からタブノキの花や実を間近に観察できる。

 秋に多岐神社に向かうと、タブノキの実がたくさん海の中に落ちているのが見える。しかし、運よく樹上で鳥に食べられる実もあり、現在海岸に近い落葉広葉樹林ではタブノキが分布を広げている。