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4 美しいブナ二次林

 高坪山(570.4m)に初めて登ったのは、村上に暮らし始めて5年目だった。なぜ5年間も登らなかったか考えてみたら、学生時代から県内のガイドブックにしていた『越後の山旅』(富士波出版社)や『新潟の山旅』(新潟日報事業社)に高坪山が載っていなかったからだった。村上市に山仲間がいるわけでもなく、単独で山に登ることが多かった自分には紙の情報しか頼るものがなかった。

 1992年は2月下旬から、日曜日の新潟日報に「にいがた50山」が連載されていた。そのコラムを毎週楽しみにして読んでいたところ、10月25日に高坪山が紹介されたのである。

 11月下旬に虚空蔵山荘の前に車を止めた。後から知ることになるのだが、虚空蔵山荘は数人のオーナーが所有する建物だった。運よくオーナーの一人が虚空蔵山荘にいて、駐車場に車を止めされていただいた。

 虚空蔵平から右折し、蔵王コースを登る。休憩所を越えるとブナが現れ始め、山頂直下は細いブナが優占する美しい二次林になる。新潟県内の山には、このように直径20センチメートル前後の細いブナが生えている森林が多い。

 十日町市(旧松之山町)に「美人林」と呼ばれているブナ林がある。訪れる観光客は毎年約10万人で、世界遺産の白神山地よりもはるかに多い。この美人林は、大正末に地主が東京に転出する際に炭にして売るために伐採した後に、再生したブナ二次林である。

 新潟県内の山に多いこのような細いブナ二次林は、ほとんどが炭焼きで伐採した後に再生したものと思われる。伐採された当時の姿を想像し、炭焼き窯跡を探しながら山を歩くのも楽しい。