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3 原植生語る1本のブナ

 下渡山(237.7m)は、臥牛山の三面川対岸に位置し、標高は臥牛山よりも約100メートル高い。しかし、臥牛山よりも標高が高いのに、何度登っても登山道脇でブナを見つけることができなかった。

 1998年11月19日夜から20日朝にかけて、新潟県北でこの季節としてはかなりの降雪があった。まだ本格的な冬には早く、かなり重い雪だったため、下渡集落背後のスギ林の多くが幹から折れた。

 樹木の樹冠に着雪し、その重さで幹が折れたり、根返りしたりする被害と冠雪害と呼んでいる。一般的に冠雪害は常緑樹のスギに多いが、下渡山の落葉広葉樹はまだ完全に落葉していなかった。そのため、コナラやミズナラもかなりの被害を受けた。その様子を確認している時に、下渡山でようやくブナを発見したのである。

 下渡山の下渡集落に面した森林は、下渡集落の共有林であり、家庭用燃料として活用されてきた。今から約60年前にも山頂まで伐採され、山頂からスキーで滑って降りたという男性の記録がある。このように下渡山の森林はこれまで何度も繰り返し伐採されてきた。そのため、ブナが優占していた森林が、ブナよりも伐採後の萌芽発生が旺盛で、しかも若齢で結実するコナラなどが優占する森林に置き換わったのだろう。登山道脇にたった1本残るブナは、下渡山の原植生がブナ林である証拠である。

 しかし、毎年4月下旬の薄緑色に芽吹くコナラやミズナラの中に、すでに濃い緑色になっている樹木が下渡山には何本も見える。その中にブナがあると思っているのだが、いまだに2本目のブナを見つけられないでいる。

 山頂から姥ケ懐コースに下ったところにブナが生えている。