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40 ショウジョウバカマの無性繁殖

 20年以上前に、いくつかの植物の生活史を解説したムックが発行された。『植物の世界』(教育社)、『フィールドウォッチング』(北隆館)、『植物生活史図鑑』(北海道大学図書刊行会)などである。

 カタクリは、種子をアリが運んだり、発芽から7〜8年かけて花が咲くことは知っていたが、カタクリの他、多数の植物の生活史が詳しく書かれている。細かく読むには大変だが、拾い読みするだけでも十分役に立つムックだった。

 カタクリとともに、前述の3種類のムック全てに登場する植物にショウジョウバカマがある。そのショウジョウバカマが無性繁殖することは、それまでまったく知らなかった。常緑のショウジョウバカマの葉先が地面に接し、新しい個体が誕生している写真を見た時は驚いた。しかし、それから気を付けて見ているものの、ショウジョウバカマが無性繁殖している姿を野外で発見することができなかった。

 初めてショウジョウバカマの無性繁殖を野外で確認できたのは、2025年3月中旬の能化山だった。能化山には柳沢ルートと焼山ルートの二つの登山道があり、その時はいつも下山する焼山ルートから登ることにしたのだった。

 登山口に車を止め、小沢を渡って焼山ルートに取り付く。斜面は湿っていて、ショウジョウバカマがたくさん生えている。そのなかに葉先から新しい個体が発生しているショウジョウバカマを見つけたのだった。そっと葉先を摘まんで持ち上げてみると、確かに新しい個体は根を地面に伸ばしていた。

 登山道を下っていたなら、たぶん見つけていなかっただろう。登りだったから、ゆっくりと登山道脇の斜面を見ながら歩くことができ、ショウジョウバカマの無性繁殖の姿を運よく発見することができたのである。