美人林について
「美人林」とは、新潟県東頚城郡松之山町松口集落にあるブナ林である。最近ではこのブナ林を訪れる人は年間10万人ともいわれている。このブナ林は1930年前後に炭焼きのために伐採された後、再生した二次林であり、林内に2箇所ほど炭窯の跡がある。松口集落に住む70歳を越える人は子供の頃この場所でスキーをしたという。このブナ林の土地所有者は再生した低木林を薪にするために、抜き切りして利用してきた。そして1980年頃に不良木や下層低木を伐採整備したところ、直径がそろった枝下高の高い美しいブナ二次林となった。美人林は3、4ha程度の広さで数人の土地所有者がいるが、美人林入り口の池手前のブナ林はひとりだけであり、とくにその場所はきれいに整備されている。
「美人林」という名前はふたりの人がつけたらしいが、そのふたりが誰であるかは明らかでない。役場の人は知っているのだろうが、私には教えてくれなかった。
さてこのブナ林は幹がほぼ同じ大きさで整然として見えるため、植栽されたブナ林である思ってしまう人もいるようだが、上記のように伐採後再生した二次林である。現在の密度はha当たり約1300本。樹高は最大で約25mである。
しかし見た目以上にブナの大きさにはばらつきがあり、胸高直径(胸の高さの直径)は10〜40cm、樹高は10〜25mである。また森林には樹木の大きさによって最大密度が決まっているのだが、現在の美人林は最大密度の約9割の混み具合と考えてよいだろう。そのため成長がよいブナでも、直径成長は1980年頃から停滞している。
美人林はこのようにブナの密度が高いため、被圧されているブナには枯損が起きている。また直径に対して樹高が高く、枝下高も高いため(枝が上部に集中しているということ)、諸被害を受けやすい樹形をしている。そのため今後台風の通過や落葉前に降雪があった場合、大被害を受ける危険性がある。間伐など長期的な視点に立った美人林の維持管理について検討しなければならない時期と言えるだろう。
さらに最近では観光客の増加による土壌の踏圧も懸念されている。1996年から1年おきに続けられてきた「ブナの森コンサート」も2000年で終了するという記事が5月31日の新潟日報に載っていた。新聞記事にあったチップ歩道は最近海岸マツ林のなかによく造られているものである。松くい虫被害木をマツノマダラカミキリの幼虫を殺す目的でチップにし、それを敷いて歩道にしたものだ。最初は白くて違和感があるかもしれないが、数年経てば腐ってくるし、クッションもきいてなかなかいい歩道だと思う。
美人林のなかの通路はだいたい決まっていて観光客が歩いた踏み跡ができているし、チップ歩道は柵など設けないので、歩道から林内には自由に出入りできる。それに歩道を造れば自然と観光客も歩道に沿って歩くだろう。以前木道を造ったらどうかという意見があったらしいが、木道に比べれば景観的にも優れた歩道である。
しかし個人的には土壌の踏圧よりも、高密度のブナ林の方が心配である。大被害を受けないうちに、少しずつ間伐していった方が良いと思うのだが、みなさんはいかがお考えだろうか。
どんな天候でも観光客はいる。枯損木はすぐに除去しなければならない。