高地肺水腫
高地肺水腫について、私の主治医であった川嶋先生の論文(川嶋 彰・小林俊夫・草間昌三(1987)日本でみられる高地肺水腫.臨床スポーツ医学4.628-634)を用いて説明する。
はじめに
高地肺水腫の特徴
2 若年者に発症しやすく、また重篤になりやすい。(論文では、15〜58歳の発症例を示している。しかし最近の登山者の傾向を考えれば、今後中高年の増加が予想される)
3 繰り返し発症する例がある。(体質的に素因がある。また飲酒も誘因のひとつであると思う。丸山直樹著『死者は還らず』の「ある単独トレッカーの死」を読んで、飲酒はまさに「火に油を注ぐ」結果であったと私も思った)
4 登山経験の有無と無関係である。(論文では、20年以上の登山経験をもつ男性が、44歳の時初めて発症した例が示されている。したがって必ずしも先天的ではない)
5 登山前の体調と無関係ではない。(無理な計画は立てないことである)
6 夏山でも冬山でも発症する。また同じ日に複数例の発症がみられる。(気象も誘因になるらしい)
7 肺水腫ばかりでなく、脳浮腫を伴うことがある。
8 症状の夜間増悪がみられる。(夜中に咳が出たら、危険である)
高地肺水腫の診断基準
(Hultgren,1976)1 安静時呼吸困難、咳などの典型的な症状が、高地到達後に新たに出現する。
2 感染徴候を欠く。
3 チアノーゼを認め、肺にラ音を聴取する。
4 安静臥床および酸素吸入により、症状・所見が急速に改善する。
高地肺水腫に関する書籍
J・A・ウィルカーソン(赤須孝之訳)「改定新版 登山の医学」東京新聞出版局
文部省「高みへのステップ